AI時代だからこそ育みたい「考える力」:家庭でできる親子の対話のヒント
AI技術が私たちの生活にどんどん入り込んできて、お子さんの将来について「この先、どんな力が大切になるのだろう?」と、漠然とした不安を感じていらっしゃるかもしれません。特に、「AIが何でも答えてくれるようになったら、子供は自分で考えなくなるのでは?」と心配されている親御さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、AI時代だからこそ、自分で考え、判断し、新しいアイデアを生み出す「考える力」は、これまで以上に重要になると言われています。AIをただ使うだけでなく、AIをうまく活用して自分の目的を達成するためには、この「考える力」が欠かせません。
この記事では、AI時代になぜ「考える力」が大切なのかを分かりやすくお伝えし、そして、難しく考えすぎず、日々の暮らしの中やAIとの関わりの中で、お子さんの「考える力」を育むための親子の対話のヒントをご紹介いたします。
AI時代になぜ「考える力」が重要になるのでしょうか
AIは、大量の情報を瞬時に処理したり、パターンを見つけ出したり、決められたルールに従って作業したりすることがとても得意です。例えば、過去のデータから未来の流行を予測したり、たくさんの文章の中から必要な情報を見つけ出したりといったことは、AIの得意分野です。
一方で、AIが苦手なこともあります。それは、全く新しい何かを生み出したり、状況を総合的に判断して未知の問題を解決したり、人の気持ちに寄り添ったり、倫理的な判断をしたりすることです。
AI時代には、AIが得意なことはAIに任せつつ、人間ならではの創造性や判断力を活かして、AIを「使う側」「活かす側」になることが求められます。そのためには、AIが出した情報を鵜呑みにせず、「それは本当に正しいかな?」「他にはどんな考え方があるかな?」「なぜこうなるんだろう?」と、自分で問いを立て、深く考え、判断する力が必要になります。
この「考える力」は、お子さんが将来どんな道に進むとしても、必ず役に立つ一生もののスキルです。
家庭での「考える力」を育むための土台作り
では、家庭でこの「考える力」を育むために、まずどんなことを大切にすれば良いのでしょうか。難しく考える必要はありません。日々の関わりの中で、いくつかのことを意識するだけで、お子さんが安心して「考える」土台を築くことができます。
- お子さんの「なぜ?」「どうして?」を大切にする お子さんが何か疑問に思ったとき、すぐに答えを教えるのではなく、「なんでそう思ったのかな?」「どうしてだと思う?」と、まずはお子さんの考えを聞いてみてください。そして、「一緒に調べてみようか」「考えてみようか」と、お子さんの知的好奇心に寄り添う姿勢を見せることが大切です。
- すぐに正解を求めない雰囲気を作る 「考える」ことには、間違えることもつきものです。間違えても大丈夫、失敗しても大丈夫という安心感があると、お子さんは自由に考え、発言できるようになります。「間違えたらいけない」と思ってしまうと、考えること自体をためらってしまうことがあります。
- 親自身も「分からないこと」を認める 親御さん自身も完璧である必要はありません。お子さんに何か質問されて分からなかったら、「ごめんね、お母さんもそれ分からないな。でも、一緒に調べてみたら面白いかもしれないね」と、一緒に学ぶ姿勢を見せることは、お子さんにとって良いお手本になります。
AIとの関わりの中で「考える力」を育む対話のヒント
AIツールが身近になってきた今、AIとの関わりそのものを、お子さんの「考える力」を育む絶好の機会と捉えることができます。AIを使うときに、少し意識して声かけをしてみましょう。
- AIに質問する前に「何を調べたい?どう聞く?」と考える 例えば、お子さんが「カブトムシについて知りたい」と言ったとき、すぐにAIに「カブトムシについて教えて」と入力するのではなく、「カブトムシの何を知りたいの?」「AIに聞くとき、どういう言葉で聞けば、知りたいことが分かるかな?」と問いかけ、質問の組み立てを一緒に行ってみてください。これは、知りたい情報を引き出すための「問いを立てる力」を育みます。
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AIの答えを「そのまま」にしない対話 AIが答えを出してくれたら、それを「ふーん、そうなんだ」で終わりにせず、さらに一歩踏み込んで対話をしてみましょう。
- 「AIはこう言っているけれど、これってどういう意味かな?」
- 「このAIの答え、分かりやすい?分かりにくい?」
- 「AIが出した情報以外に、何か知っていることはある?」
- 「この答えは、本当に正しいかな?他の本やサイトでも調べてみようか?」
- 「もし、この答えが違っていたら、どうなると思う?」 このように、AIの答えを批判的に検討したり、他の情報と比べたり、さらに深く考えたりする問いかけは、お子さんの情報リテラシーと考える力を同時に育みます。
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AIの生成物を起点に「考える」練習 AIは文章や絵などを生成することも得意です。これらを活用して考える力を育むこともできます。
- AIに簡単な物語を作ってもらい、「この物語の続きを考えてみようか」「登場人物の気持ちになって考えてみよう」と展開を考える。
- AIに絵を描いてもらい、「この絵をどう思う?」「この絵にタイトルをつけるなら?」と、感想やアイデアを引き出す。
- お子さんが何か作ったもの(ブロック、絵など)について、AIに「この作品についてどう思うか聞いてみようか」と尋ね、AIの返答を受けて「AIはこう言ってるけど、どうかな?」「AIが気づかなかった素敵なところはどこかな?」と、お子さん自身の考えや工夫を言葉にする練習をする。
日常生活の何気ない瞬間に「考える力」を育む対話
AIツールを使わない日常の会話でも、「考える力」を育むヒントはたくさんあります。
- 「なぜ?」「どうして?」を問いかける 道端で見かけたもの、絵本の中の出来事、ニュースで見たことなど、日常のあらゆることについて「これってどうしてこうなっているのかな?」「もし、〇〇が△△だったら、どうなると思う?」と、お子さんの素朴な疑問や想像を引き出す問いかけをしてみてください。すぐに正解を教えるのではなく、一緒になって考えたり、お子さんのユニークな発想を面白がったりすることが大切です。
- 「どうしたらいいかな?」と問いかけ、解決策を一緒に考える 「おもちゃ箱がいっぱいになっちゃった、どうしたら全部入るかな?」「このブロック、どうやったらもっと高く積めるかな?」など、身近な困りごとや課題について、お子さんに「どうしたらいいかな?」と問いかけ、一緒に解決策を考えるプロセスを大切にしてください。これは、問題解決能力や論理的な思考力を育みます。
- 「もし〜だったら?」と想像力を刺激する 「もし空を飛べたらどこに行きたい?」「もし動物と話せたら、最初に誰と話したい?」など、非現実的なことでも構いません。想像力を働かせることは、新しい発想やアイデアを生み出す力につながります。
まとめ
AI技術の進化は目覚ましいですが、AIはあくまでツールであり、それを使う人間の「考える力」がますます重要になります。お子さんの「考える力」は、特別な勉強をしたり、難しいAIツールを使ったりすることだけで育まれるものではありません。
むしろ、日々の暮らしの中での何気ない親子の対話や、身近なAIとの関わりの中で少し意識した声かけによって、着実に育んでいくことができます。
お子さんの「なぜ?」「どうして?」に耳を傾け、すぐに答えを与えずに一緒に考え、AIの答えを鵜呑みにせず問いを立て、身近な出来事から一緒に考える習慣をつけること。これらの小さな積み重ねが、AI時代を力強く生き抜くための「考える力」の大きな土台となるはずです。
難しく考えすぎず、お子さんとの会話を楽しみながら、ぜひ今日から始めてみてください。